キアゲハ --- Papilio Machaon ---
キアゲハは、県南では年3〜4回発生し、都市部から山間まで広く分布する普通種です。 人里にもよく見られますが、この蝶に会うためには低山の山頂が最も確実です。 ♂が山頂を占有する性質がアゲハ類の中でも強い種だからです。
一年中撮影できる蝶ではありますが、山頂を舞う姿を撮るのは春が多いです。 新生蝶として、モンシロチョウについで早く現れ、ほかの蝶がまだ少ないこと、 夏型がだいぶ黒っぽくなってしまうのに対し、春型は明るい色で写真写りがよい、 ということが理由です。実際は、夏の低山の山頂、はべらぼうに暑く、こちらの 体力がもたない、というのが真相かもしれません(^o^)                                                              
占有行動
一日中、その辺を飛び回っている、といって過言ではありません。 草原の上は低く飛び、木があるとその高さに応じた空域を占有します。 桜があると、ちょうど満開の桜の前を飛ぶことになります。 PM

人工物も嫌いません。山頂に弘法大師をお祀りするお堂があり、 軒下を飛んだり、屋根の上を越えていくのがお気に入りのようです。 占有飛翔に忙しいので触覚の手入れも空中でやってしまうようです。 PM
ときどき静止しますが、少しでも高い、見晴らしのよい場所を選ぶようです。 地上にベタっと止まることもありますが、360°廻りが見える場所を好むようです。 暖かい春の山頂にはたくさんの蝶やハチがヒルトップしてくるので、 キアゲハが長く静止することがありません。 目の前を飛ぶものを追ってすぐに飛び立つからです。 この日はクマンバチの一個大隊がぶんぶんやっており、休まる暇がありませんでした。 PM

追飛
キアゲハ同士の追飛は、 たいていの場合、力関係が決まっていて、 一方がもう一方を徹底的にたいへんなスピードで追い回すことが多いです。 劣位の方が、占有地の山頂を遠く離れるまで続くようです。 これの撮影はたいへんで、うまくいったことがありません。 しかし、ときに激しく絡み合うこともあります。

PM 遠くで、追飛が始まりました[左]。いつもと様子が違います。 慌てて駆け寄りながら、無駄と知りつつ連写に入ります。 2コマ、フレームアウトの後を右以降コマ連続で掲載します。
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つかみ合いになっていました。 上(右後翅が少し欠損している)が、 ずっとなわばりを守ってきた個体で、優位にあって攻勢です。 飛ぶほうが疎かになっていて、少しづつ高度が下がってきます。 PM PM PM
[左]左側の個体が振り切って上昇
[中]右の個体は追跡。
カメラは振り切られて1コマ外しました
[右]かなり上昇しましたが捉えられて再びつかみ合いのケンカです。
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ケンカしながら落ちていきます。 PM PM PM PM
左端のコマでカメラの連写メモリが尽きました。 このあと、守勢に廻っていた個体が再び振りほどいてまっしぐらに飛び去りました。 全部でほぼ3秒の出来事です。これほど執拗な追飛はあまりみることがありません。
 

訪花
春の山頂にある吸蜜源は限られています。 桜とツツジ(コバノミツバツツジらしい)が主なものです。 地上に咲くタンポポやマメ科の小花に来るのは見たことがありません。

占有する個体の吸蜜は非常に短時間で、 撮影は困難です。とつぜん花に降り、 慌てて近づいて構図を考えてシャッターを 押すころにはもう飛び立っています。
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ツツジの花は小さく、花をそとから抱え込んで、頭を突っ込んでいます。 ごく僅かの時間で吸蜜を終え、すぐに飛び立ちます。畑や人家の周りを飛ぶ 個体が、のんびり吸蜜する姿からは想像できないせわしさです。 PM

再び占有飛翔

やはり、キアゲハには休みなく飛び続ける姿が似合います。 占有するピークをバーベキューを楽しむ家族に譲り渡しても、気にしないようです。
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満開の桜の前を飛ぶキアゲハ。この姿が撮影できる日はアマチュアカメラマンには一年に一日しかありません。今日は晴れ。撮れてよかった。

しかし、今年も配偶行動にはお目にかかれませんでした。また来年。 月末には田んぼのセリなどに産卵する♀が見られるはずです。
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 写真と文:岡山昆虫談話会会員 藤本徹哉
撮影:2009年4月12日 笠岡市有田鴻の峰山頂付近


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