ウスバシロチョウ(ウスバアゲハ) --- Parnassius Glacialis ---
ウスバシロチョウは残念ながら県南には分布せず、中北部に産するとされています。 筆者の行動範囲である県西部では吉備台地とその周辺で 小さな草原、山村の草地、公園の周囲などに点々と発生しているようです。

しかし、珍しい種ではありません。5月の行楽シーズン、 県中部〜北部へ出かける機会があれば、目にする可能性は高いと思います。

アゲハ類を撮影に行った高梁市川上町の弥高山でも、 たくさんの行楽客でにぎわう山頂の草原を飛ぶ姿がみられました。
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6 May. 2009 弥高山遠望


飛翔
飛翔は特徴的です。同じ白一色でも、ほとんど羽ばたきづめのシロチョウ類と違い、
直線的に飛び、風にのって非常にゆっくりと滑空するので、すぐに区別できます。
飛ぶ姿はアサギマダラにも似て、非常に優雅で、よく目立ちます。
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追飛


比較的大きく、きわめてゆっくりと直線的に低く飛ぶので、 飛翔の撮影は、もっとも易しい種のひとつです。 PM PM PM
しかし、日がな一日、草原をゆったりと飛ぶ蝶。 撮っても撮っても同じような写真にしかなりません。 意外にも、カメラマン泣かせな蝶かもしれません。
ここは開き直って、同じような写真を並べることにしよう。
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すこしでも違った絵柄にしよう、といろいろ試みます。 翅を閉じた姿(左端)。高く舞い上がる(中央)。 転回する瞬間(右)。どれも、いまひとつ。 やはり、普通に、優雅に舞う姿をひたすら撮影して楽しむのが王道なのかも。 PM PM PM

追飛
♂♂の追飛は、長続きしません。短時間で相手が♂であることを認識しているに 違いありません。右のものも2コマの連写で終了です。 一方、♂♀の追飛は、普段の探♀飛翔と違ってかなりのスピードで逃げる♀を 延々と♂が追い続けます。カメラマンは遅い飛翔に馴れきっていて、突然始まる すばやい追飛についていけず、写真がありません。 PM PM

配偶行動
交尾が成立する配偶行動には今年はお目にかかれませんでした。 右は、探♀飛翔していた♂が、静止している♀を発見して舞い降りたもの。 ディスプレイなど一切なしで、翅の上から♀を押さえ込んで飛べなくしてから 交尾を試みる、という、優雅な飛翔からは想像できない荒っぽさです。
♀は交尾嚢をつけた既交尾個体で、シロチョウ類とは逆に腹を下げて♂を かわしていました。
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訪花
草原のクサイチゴ、周囲の畑の大根などへの吸蜜がみられました。

大根の花を足で抱え込んでガツガツと吸蜜します。ある程度硬くて丈夫な花でないと、いい絵になりません。

道路沿いの畑のネギ坊主や、季節が下ってのアザミなどへの訪花写真が定番なのはそのためではないか、と思っています。
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もいっちょ飛翔
最後に、夕方の斜光の中を飛ぶ姿をもう一枚。山村の、なつかしい風景を背景に。銀白色の体毛が美しくなびきます。これは寒冷地仕様の防寒着なのでしょう。温暖化が議論される中、この蝶の分布域が狭まることのないよう願っています。 PM

 HOME     写真と文:岡山昆虫談話会会員 藤本徹哉
撮影:2009年5月6,9,10日 井原市芳井町・高梁市川上町、松原町にて。
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